書店・図書館の選書に関する話

私は20代の前半に図書館スタッフとして働いていたことがある。新卒で入った会社で打ちのめされ、新聞広告に載っていた非正規の募集に応募、そのまま採用されて転職した。公務員ではなく、調べればすぐに出てくるような業務を請け負う民間企業だ。

 

給与は驚くほど低かったが、仕事はとにかく楽しかった。関係者のほぼ全員が私より本に詳しく、ノルマに踊らされることがない現場は常に明るく、和気あいあいとしていた。

そもそも若い男性が少なかったこともあり、1年もすると役職がついた。そうすると本の見え方が違ってくる。市・区民が求める本、よく読まれる(=貸出数が増える)本が、本の価値になってくる。

ただそういう本は、俗的であったり、一時的な人気があってもすぐに忘れ去られる内容であったりすることが多い。

これを買うことそのものが悪、ではまったくないが、図書館としての役割をはっきりさせ、もっと固く、間違いのない選書をすべきなのに…と常々思いながらも、個人的な都合で退職してしまった。

 

こう思うのには1つ、思い出があるからだった。

私が高校生の頃、通学途中の駅ビルに書店があった。私は1冊を読み終えるとその書店で次の1冊を探した。主には小説で、著者は問わず、とにかく見た目やあらすじが気に入った本を買っていた。

決して売り場は広くなく、品揃えも多くはなかったが、書店に対して何も不満はなかった。が、改装を期に文具や旅行雑誌が売り場の大半を占めるようになってからは、あまり立ち寄らなくなってしまった。

それは、小説の品揃えが減ったという直接的な理由だけではなく、書店が書籍を軽んじているように感じられたからだ。

書店にとって売上は文字通り生命線で、何より重要なことはわかる。でも純粋に小説を求めていた幼い私にとっては悲しく、何かその書店を物忌みしてしまうこととなった。

 

書籍を選ぶことは難しい。人が求める情報を予測し、売上・貸出などの数値で評価されると思えば、前述のような数値化されない感情を持って書籍を見る人もいる。

 

皆、立場が違い、求めるものも違う。だから正解はないのだけど、固い(何をもって固いというのかすら謎なのだけど…)選書も忘れないでほしい、という駄文である。