お祖母ちゃんとマフラーの話

2010年の冬、お祖母ちゃんにマフラーを買ってもらった。

当時私はもう大学生になっていたが、マフラーなど首に巻き付ける衣類が苦手で持っていなかった。

お祖母ちゃんの家に遊びに行ったとき、「寒いねー。え、あんたマフラー持ってないの!?買ってあげる!」となったわけだ。

私は、”身に付けないかもな…”と思いつつも、お祖母ちゃんの熱量に押されて家てもらうことにした。

そして、近くのスーパーの2階にある衣類売り場で、900円ほどの緑色のマフラーを買ってもらった。

 

当時、お祖母ちゃんは70歳ほどだっただろうか、足腰が辛いようで、買い物もあまり行けていなかった。それでもこのマフラーを買い与えたかったようだ。足を引きずりながら、そしてマフラーも引きずってしまいながら、レジまで歩き、会計してくれた。

マフラーは私の想像よりも暖かく、この緑色のマフラーを愛用することになった。

 

お祖母ちゃんは翌年の夏に亡くなった。図らずも形見となった緑色のマフラーは10年以上経った今でも愛用している。全体が毛玉だらけになり、ヒゲや髪が引っかかってしまうが、どうにも捨てられず、着用してしまう。

 

毎年マフラーを出すとき、マフラーを引きずりながらレジに向かうお祖母ちゃんの後ろ姿を思い浮かべてしまう。

 

一方で、結婚後、妻にもネックウォーマを貰ったことがある。こちらもこちらで胸周りがスッキリとして使いやすい。寒がりな私はこちらを家の中で、マフラーを外で使用している。

 

お祖母ちゃんに買ってもらったマフラーは、今後どうなることだろうか。私が自発的に捨てることはできないだろう。

もし私がおじいさんになって、棺に入ることがあれば入れてもらうのがいいだろうか。

ただマフラーを出しただけなのに深く考えてしまった、という話でした。