京セラドームのフェンスの思い出の話

プロ野球ファンとして、球場のフィールドはとてもワクワクする場所である。

 

学生時代、関西に住んでいたこともあり、オリックスの試合はよく見に行った。また、交通網の関係上、神戸ではなく大阪の京セラドームで観戦した。自宅の最寄駅から梅田まで出、大阪環状線で大正まで乗る。梅田からの大阪環状線ホームにはUSJに出かける人たちも見かけることができ、それだけで遊びに出かけている雰囲気を得られる、とともに、これから野球を現地で見られるというワクワクが、その時点で湧いてきていたのをよく覚えている。

 

普通に観戦するだけでは、まずフィールドに降り立つことはできない。せいぜい、内野席の最前列に出てフィールドと同じ目線に立てるくらいだ。そんな折、フィールドに立つチャンスがあった。就職活動である。

 

京セラドームで大きな会社説明会が開催されることは、大学からのメールインフォで知ったのだと思う。当時、大学3年であった私はまさに就職活動の対象で、しかもまだ内定がなかったため単純に就活をやらねばならなかったのだが、そんなことよりもフィールドに立ちたい、歩きたいという気持ちで参加予約していた。

 

当日、オリックスの試合時よりも人が多く、いつもの入場口も景色が違っていた。そして、ブルーシートに覆われはしていたものの、フィールドに降り立つことができた。そして、今は濃紺色だが、当時は明るい水色であったフェンスに触ることができた。手触りはゴツゴツしていたが、十分なクッション性があり、選手への配慮も感じられたものであった。球場のフェンスをまざまざと触ったのは初めてで、とても感動した。

 

一方、困ったことに、ブルーシートに覆われた京セラドームでは、方角が全くつかめなかった。ホームベースの位置はもちろん、どちらが内野か外野かすら簡単には分からなかった。野球観戦をする方は”そんなバカな、ビジョンもあるし分からんわけないでしょ”と思うだろう。しかし、足元はブルーシートに覆われ、頭上にはブースの表示や会社の宣伝が無数にぶら下げてあり、視界がない状態であると、本当に分からにのである。

 

しばらくして、この会社説明会とは全く関係のない会社に入社した。しかし、就職活動の思い出といえばこれが本当に強く残っている。

京セラドームはその後、芝生の張替えや前述のフェンスの変更などがあり全く装いを異にしてしまったが、それでも同じ場所で今年、オリックス・バファローズは優勝の瞬間を迎えた。バファローズ戦士たちはそこで宙に舞った。

 

京セラドームで舞い上がった中嶋監督を見たとき、そんなことを思った、という話でした。